なぜチームで活動するのか?
その答えは、一人ではできない事を、チームなら実現可能だからです。
本書でいうチームの定義は、
「共通の目的を持った2人以上の集団」
つまり、会社はもちろん、あらゆる場面でチームは存在しています。
女子会のメンバー、合コンなどの集まり、部活、学校の集団下校。
また、日常にあるものがほとんどチームによって創造/運営されています。
しかし、「チーム」づくりについて学ぶ機会はほとんどないため、
本人の経験則や感覚、精神論なんかで語られる事が多いのではないでしょうか。
例えば、
・目標を確実に達成するのが良いチームだ
・人が入れ替わらないのが良いチームだ
・チームはコミュニケーションが多ければ多いほど良い
・みんなで話し合って決めるのが良いチームだ
・メンバーのモチベーションを高めるには、リーダーが情熱的に語りかけることが大切だ
しかし、現代はあらゆるチームが存在しています。
・スマホアプリの開発チーム
・生命保険の営業チーム
・飲食店スタッフのチーム
・マラソンランナーのチーム
まったく異なる属性のチームを、
同じ考え方で運営してしまうのは誤り。
時に、良かれと思っていたことが、
そのチームのパフォーマンスを下げている原因にもなってしまいます。
チームの属性に合わせ、学術的根拠をもとに導き出された5つの法則をもとに、何が一番良いのかを考えて運営していくヒントを与えてくれる内容の本でした。
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【5つの法則】
・Aim(目標設定)の法則 ─[旗を立てろ!]
・Boarding(人員選定)の法則 ─[戦える仲間を選べ]
・Communication(意思疎通)の法則 ─[最高の空間をつくれ]
・Decision(意思決定) の法則 ─[進むべき道を示せ]
・Engagement(共感創造)の法則 ─[力を出しきれ]
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目標を確実に達成するのが良いチーム?
・Aim(目標設定)の法則 ─[旗を立てろ!]
たしかに、目標を毎回達成するのはすごいチームです。
しかし、その目標の背景にある「目的意識」がないチームは、
良いパフォーマンスを出すことができません。
チームメンバーの行動は「目的意識」に左右されるからです。
例えば、
「今日一日見た赤いものの数を教えてください」と、
突然聞かれても正確に答えることはできません。
しかし、明日同じ時間に同じ質問をされるとわかっていたら、
行動は変わります。
何か目的意識をもつと、
通常よりもまわりの情報を集めるようになるからです。
そのため、
「目標を確実に達成するチーム」よりも、「目標を適切に設定するチーム」の方が大切になります。
自分自身で目標を設定する機会というのは、なかなかありません。
・スポーツでよい成績を出す
・学校のテストでよい成績を出す
など、目標を誰かから与えられることに慣れている人が多いと思います。
しかし、チーム作りにおいては、メンバーに目標を押し付けるのではなく、みんなで考えて目標を設定するというのが重要になります。
本書で紹介されていた目標の3つのタイプ
それぞれの目標のタイプによって、メリットデメリットがあります。
・意義目標
テーマが抽象的になる事が多いので、何かに固執せずに幅広くアイデアを考える事ができる。
その反面、これだけだと具体的に何をしていいかわからない
・数値目標
目指すところは明確なので、別の効率を重視した方法を考える事ができる
「やる意義」が弱いので、時に手段を選ばず、本来の目的からそれやすい。
・行動目標
具体的に何をするのかが明確なので、動きやすい。
何のためにこれをやっているのかがわからないので、納得感が低かったり、作業の奴隷となり、新しいアイデアが生まれにくい。
そのため、いずれかの目標一つだけではなく、
なんのため?
どのくらい?
具体的に何をする?
という3つが繋がった一貫性のある目標を立てるのが理想です。
「そのチームが何のために存在しているのか」
「どんな影響を与えていくのか」
という事をすべてのメンバーが意識すると、日々の行動に影響し、成果を上げるチームとなります。
ビールメーカーの営業チームの例
「意義目標」
→幸せな食事の時間を提供する
「数値/成果目標」
→売上1000万
「行動目標」
→量販店や飲食店に月間100件のアポイントをとる
人が入れ替わらないのが良いチームなのか?
チームに絶対の正解はなく、チームごとに最適なアプローチがあります。
チームが置かれている状況によってなので、
・多様なメンバーがいるほうが絶対に良い
・人が入れ替わらない方が絶対に良い
と、一概には言えません。
・環境変化(作業内容の変化がどれくらいあるのか?)
・人の連携度合い(コミュニケーションがどの程度必要か?)
という2つの軸で考えた時に、4つのチームのタイプに分かれます。
それぞれのタイプごとに最適はこのような傾向になります。
サッカー型
・環境変化が大きい
・人材の連携度合いが多い
→アプリの開発チームなんかが該当します。
この場合、
・メンバーの入れ替わりがあった方が良い(出口にフォーカス)
・多様なメンバーがいた方が良い
柔道団体戦
・環境変化が大きい
・人材の連携度合いが少ない
→生命保険の営業チームなんかが該当します。
この場合は、
・メンバーの入れ替わりがあった方が良い(出口にフォーカス)
・多様なメンバーは必要ない
野球型
・環境変化が小さい
・人材の連携度合いが多い
→飲食店スタッフのチームなんかが該当します。
・厳選したメンバーを入れる(入口にフォーカス)
・多様なメンバーがいた方が良い
駅伝型
・環境変化が小さい
・人材の連携度合いが少ない
→工場の生産ラインのチームなんかが該当します。
・厳選したメンバーを入れる(入口にフォーカス)
・多様なメンバーは必要ない
自分自身でメンバーを選ぶことができない場合、
「どのようなメンバーが今のチームに必要なのか?」を考える事も重要です。
チームはコミュニケーションが多ければ多いほど良いのか?
チームにはさきほどの4タイプがあり、それぞれ最善の傾向が異なりますが、共通しているのは、「コミュニケーションは少ないほうが良い」と言うことです。
コミュニケーションがないと回らない状況は、時間や人材のコストがかかるため、ある程度のルールの中で自分で考えて行動できるように適切なルールづくりが大事です。
しかし、コミュニケーションを少なくするために、無駄話を一切してはいけないと言うことでもありません。
ここで紹介されていたのが、「相互理解」という考え方です。
相互理解とは、相手の事を理解してから、自分も理解されるということです。
つまり、自分を知って欲しいのであれば、相手をまず知りましょうと言う事。
メンバー同士がもっとお互いを知ることによって、より少ないコミュニケーションで意思疎通ができます。
お互いの考えがよく分かった上であれば、ちょっとした言い回しなどで誤解を招いたりすることも少なくなるのではないでしょうか。
どんなに正しい意見でも、それが自分のことを全然理解していない人からの意見だったらあまり話が入ってこない事ってありますよね。
みんなで話し合って決めるのが良いチーム?
これもチームの状況によって違います。
何かを決めるときの、意思決定には3種類あると言われています。
それぞれメリットデメリットがあります。
独裁はよくないように思われがちですが、意思決定が早く、その決定が間違っていた場合に修正がかけやすいです。
また、こんな考え方もあるようです。
ファーストチョイス理論
チェスで「5秒で決めた手」と「30分考えた手」は、80%が同じ
つまり、5秒で決めた事と30分考えた事は結局ほぼ同じなのだから、一旦すぐに決めてすぐに取り掛かった方がよいということです。
シンガポールも以前は独裁政権でしたが、おかげで経済成長が早くなり、今では日本よりも豊になっています。
その反面で、独裁で何でも決めてしまうと、メンバーの納得度は低いものになります。
そのため、この3つの意思決定の特徴を知った上で、どの場面でどの意思決定で進めるのかが大切です。
独裁で判断をしても、それが間違った情報をもとにした判断にならないように、メンバーがリーダーに情報を共有するという事も大事なのだと思います。
メンバーのモチベーションを高めるには、リーダーが情熱的に語りかける?
何かの行動の背景には必ず「モチベーション」が存在しています。
しかし、「何によってモチベーションが左右されるのか?」がメンバーによって違います。
モチベーションに影響を与える要素として、以下4つのPがあると言われています。
①Philosophy(理念・方針)
②Profession(活動・成長)
③People(人材・風土)
④Privilege(待遇・特権)
①Philosophy(理念・方針)
その企業の理念。方針などに共感すればするほど、メンバーがモチベーションがあがる
→ディズニーのキャストなど。
②Profession(活動・成長)
日々の働きから得る仕事の充実感
→大手外資企業の実力主義の環境などで、やりがいを感じれば感じるほどモチベーションがあがる
③People(人材・風土)
「誰と働くか?」憧れの先輩がいたり、仲間との繋がりを実感すればするほどモチベーションがあがる
→リクルートなど、すごい先輩がいっぱいいる環境
④Privilege(待遇・特権)
報酬を貰えば貰うほどモチベーションがあがる
一見、誰でも④(つまりお金)でモチベーションが上がりそうなきがしますが、①~③の目に見えない報酬「感情報酬」と呼ばれるものの影響力が強くなっていると言われています。
それは、社会的に豊かになっている傾向がある事や、共感によって動く人が多くなっているからです。たしかに、どんなに④(給料)が良くても、①~③が最低な環境を想像すると、あまり働きたい環境ではないですよね。
チームの落とし穴
チームのメリットは、誰か共通の目的を持った人と組む事によって、一人で出せるパフォーマンス以上のパフォーマンスを出せるようになる事にあります。
反対に、まったく逆の結果を招いてしまう事もあります。
例えば、
Aさんのパフォーマンスが100として、
Bさんのパフォーマンスも100だったとします。
二人が組む事によって、理論値では200になると思いますが、チームワークによって300になる事もある。
しかし、反対に180とか、150とかに下がってしまう事もあります。
何がそうさせてしまうのか?
それは、以下4つの原因によって引き起こされます。
①社会的手抜き(自分一人くらい)
②社会的権威(あの人が言っているから)
③同調バイアス(みんなが言っているから)
④参照点バイアス(あの人よりやっているから)

①社会的手抜き(自分一人くらい)
自分一人くらいやらなくても大丈夫だろうという心理のことです。
集団が大きくなればなるほどにこの心理が働きやすいと言われています。
この心理を避ける為には、メンバーが「当事者意識」をもてる環境にする必要があります。
・人数
チームがある程度の人数になったら分化する
・責任
責任の所在を明確にする
・参画感
あらゆる意思決定が自分の知らないところで行われる事により、
メンバーは他人事のように感じていきます
「独裁」だけではなく、「多数決」や「合議」を適所で使用する
②社会的権威(あの人が言っているから)
「あの人が言っているから間違いないだろう」と思ってしまう心理です。
この心理を防ぐには、
メンバーを否定せず、自分の意見を持ち、発信できる環境が必要です。
③同調バイアス(みんなが言っているから)
行列のできるお店を見かけた時に、自分もついつい列に加わってしまったり、
何か人気の商品を自分も買ってしまったりという心理の事です。
この心理を防ぐ為に、
・スポットライト
模範とすべきメンバーの行動や態度に焦点をあて、チームの雰囲気を変化させる
・インフルエンサー
メンバーの中で影響力の大きいメンバーに個別に働きかける事によって、
チームの雰囲気を変える
④参照点バイアス(あの人よりやっているから)
他のチームメンバーの行動を基準にして自分の行動や態度を変えてしまう心理の事です。
「Aさんもサボっているから自分も・・・」
チームに明確に基準やルールを作り、評価の対象を明確にする
本書についてと著者について
著者:麻野耕司
リンクアンドモチベーションの取締役、
オープンワーク株式会社(旧株式会社ヴォーカーズ)副社長
※国内最大級の社員クチコミサイト「Vorkers」を展開
メルカリ会長兼CEO山田進太郎も推薦するこの本書ですが、
麻野さんの実体験だけでなく、何を根拠にその法則を示しているのか?という学術的根拠の話もあり、納得の内容でした。
よく、「かんたんで分かりやすい内容でした」というレビューを見かけたのですが、たしかに表面上はとても話が入ってきやすい内容かとは思います。しかし、どうやって実践しようかと言うところで、すごく考えさせられた本でした。
実際に「まずは意義目標を立てよう!」と、チームに落とし込んだ時に、そもそもメンバーが自分で目標を立てるモチベーショを作っていかなくてはいけません。
そのモチベーションを作るために、メンバーは4Pのどれに共感しているのか?と言う事を知るところから始めようと思います。
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